フシチョウ・・・・きゅうぞうの部屋
日々のできごと、好きなもの、好きなひと、 そして、病気のことなどを綴っていこうと思っています。。   
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忘れえぬ記憶のカケラ
       昔むかし大昔、・・・・・・・・

       ある村の路傍に、小さなお地蔵さまが祀られておりました。

       そのお地蔵さまは、とても清らかで慈悲深いお顔をされておりました。

       村人が其処を往く度に合掌し、日々の感謝を述べておりました。

       そんな穏やかで平和な村にも、戦の足音がひたひたと近づいておりました。

       この時代、あちらこちらで戦の狼煙があがり、・・・

       たくさんの村々を、盗みや陵辱、

       そうして終いには、焼き討ちという極悪非道の限りを尽くした兵士たちが

       横行していたのでありました。

       唯でさへ、疫病、飢餓と、この混沌とした世の中に於いて、

       ここの村人たちは脅威を感じ、日々暮らしておりました。

       夏の茹だるような暑さの中、とうとうこの村にも、

       その火の粉が飛んできたのであります。

       逃げ惑う人々、ただ立ち尽くし茫然自失の者たち、・・・・

       余りの凄惨さに目を覆うばかりでありました。

       そのおぞましい爪痕を、ただ悲しく見つめる者がおりました。

       この村の、あの慈悲深い優しいお顔をしたお地蔵さまです。

       だが兵士のあらゆる咎が行われた後、・・・・

       そのお地蔵さまのお顔は、果てしない怒りに変貌していました。

       そして、月日は経ち、その村にも平和が訪れ、

       あのような陰惨な出来事は影を潜め、

       みなが忘れ去ろうとしていたのです。

       ところが、或る茹だるような夏の午後、・・・・・

       ひとりの旅の僧侶が小さな祠に立ち寄り、

       そこのお地蔵さまに手を合わせると、

       かすれたような憂いを含んだ声が聴こえてきたのです。

       「どうかどうか、みなにご先祖さま達の苦しみを忘れぬよう、

        ご尽力願えまいか。。。。」と、・・・・

       はじめは空耳かと思い耳を澄ましてみると、

       また声が聴こえてきたのであります。

       「そなたしか、すがる者がおらぬのじゃ。」と・・・・・・・。

       僧侶は、声の主のほうへと目をやり、驚き、腰を抜かすところであった。

       そのお地蔵さまの目からは、血のような紅い涙が流れていたのである。

       気を取り直し、お地蔵さまにこの村で行われた事柄をよくよく訊くことにしました。

       それからというものこの僧侶は、

       この願いを叶えるべく奔走したのでありました。・・・・・・

       そうして、その努力が実り、・・・・・・

       今では、蝉が鳴きだす頃には盛大に、

       死者の魂を弔う祭祀が行われているという事です。

       ◆    ◆    ◆    ◆    ◆


       「はぁ~っ」とため息をつき、この村の「歴史書」をパタンと両手で閉じた。

       僕の村には、こんなことがあったのか。。。。

       「明日にでも図書館に行き、もっと詳しく調べよう」、と少年は呟いた。

       そして階下へ降りると、早速両親に、この土地の祭りの意味を訊いてみた。

       すると、父が、

       「みんなの無病息災を願ってに決まってるだろう、

        そんな事も知らないのか?」と笑われてしまった。

       確かに、そういう意味もあるのだろう。が、・・・・

       しかしながら、この小さな村の祭祀の成り立ちでさへ忘れていくのだ、

       あの惨い戦争や人間の過ちをも、塵芥の山と化すのだろうか。。。

       僕は、ちょっと怖くて不安になり、身震いをした。

       それにしても空が青いな、と少年は空を見上げた・・・・・・・・

       

       もう直ぐ、あの季節がやってくる。・・・・・・・・

       僕は、どれだけのものを残していけるのだろうか。。。。

       忘れないように、僕の脳裏に、

       みんなの心に刻み付けておきたいものだ。

       
       それにしても、澄んだ雲ひとつない空が広がっている、

       この大空が、いつまでも続くといいな、と少年は想った。・・・・・・・



       

            
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