フシチョウ・・・・きゅうぞうの部屋
日々のできごと、好きなもの、好きなひと、 そして、病気のことなどを綴っていこうと思っています。。   
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続く道・・・・・・
     「ううっ・・はぁはぁ・・・や、やめろ、やめてくれ!!」・・・

     “ゴン”と鈍い音が部屋中に響く。と同時に男は目を醒ました。

     ベッドのへりで頭を強く打ってしまったようだ。

     しかも、おもいっきり腕を伸ばしていた、それは千切れそうなほど痛かった。

     強打した頭をかかえながら、
     朦朧とした意識の中でも、男は、ため息を吐く。

     「まただ、なんなんだこの夢は・・・・・・・、くっそ~!!」と、独り言ちた。

     そのうち、その男は自分でも制御できないほどの怒りが込み上げてきたのだ。

     身の回りのあらゆる物を、部屋の壁に投げつけた、
     ベッドわきに置いてあった電気スタンドのくびはグニャッと折れ曲がり、
     白磁のアロマポットは粉々に砕け散った。
     枕から飛び出した羽根が“フワフワッ”と舞い降りていく。

     それを目で追いながら、やっと男は我に返った。

     しかしながら、その男の家族は、激しい物音を聴いたはずだ。
     だが、その部屋のドアはひっそりと静まり返り、
     男の期待に応えることはなかった。

     「毎度まいどのことだからさ。ふっ・・・・・・俺はここにいるんだぜ。
      おやじよ~、おふくろ~、ブスマキのバカヤロー。」と、
     罵ってみたが虚しいだけだった。

     こんな夢を見てうなされるのは、もうかれこれひと月になる。

     いつかは、着物を着た男の子が川で溺れ助けを求めていた。
     小さい頭が、水の中から“ポコッ”と出たり沈んだりしていたのを鮮明に憶えている。
     その時、男は助けようと川に飛び込もうとするのだが、
     息が苦しくて、何故か手足の自由を奪われていったのだ。
     そうするうちに、目の前が真っ暗になり、夢から醒めたのだ。

     目が醒めた瞬間、
     自分が川に溺れたのではないかと思うぐらいに「ぷはぁ~っ」と、
     肩で大きく息をする。
     あの男の子は大丈夫だろうか、・・・・・
     誰かに助けられたのだろうか、・・・・・と、脳裏に一抹の不安がよぎる。
     それにしても、旧い時代の子供のような感じだった。

     或る日は、病院のベッドに横たわり、
     「ううううっ・・・・痛い、うぐ~っ。」と、苦痛に顔を歪めている兵隊さんが現れた。

     その兵隊さんの足を見てみると、“パックリ”と傷口がひらいていたのだ。
     その大きく引き裂かれた傷口から、鮮血が“ドクドク”と流れだし、
     看護士さんが止血を試みるも、それは止まることを知らなかった。

     男はどうすることもできずに、只、この光景を佇んでみているだけだった。

     そのうち、その兵隊さんは麻酔をかけられる事もなく、
     軍医らしき人物の手によって、足を切断された。
     その時の、耳をつんざくほどの絶叫は今でも耳鳴りのように残っている。が、
     その最中も、男は自分の足の痛みで失神したのだ。

     そして、苦痛の中で、手に汗を握りながら、またもや目が醒めたのだ。

     男は、こんな事を、毎日繰り返しているのだ。
     泣き叫んで目が醒めたこともあった、
     少女の目の前にトラックがあらわれ、その少女はタイヤに巻き込まれたのだ。
     たぶん、即死だったろうと思う。
     なぜなら、その時も助けようと走り出した途端、
     身体中が何かの物体にぶつかったのではないかというぐらいに
     激しい痛みが襲ってきて、息ができなくなって目が醒めたのだ。

     そして、今日みた夢は、
     スーツをだらしなく着て、虚ろな目をしたサラリーマン風な男。
     ビルの屋上のへりに座り、車が行き交う路を
     然も面白そうに覗き込んでいた。

     「そんなところに居たら危ないですよ、落ちてしまいますよ。」と声をかけた。
     そのサラリーマン風の男は、その男には目もくれず“スック”と立ち、
     いきよいよくビルから身を投げた。
     必死で男は、腕を伸ばし助けようともがいた。が、手遅れだったのだ。
     そして、冒頭のへりで頭を強く打ったシーンへと戻るのだ。

     あのとき強打した頭の痛みは、苦い思いを蘇らすには十分だった。

     男はもう一度、ドアを“チラッ”と横目でみた。
     やはり、鉄のドアのようにビクとも動く気配をみせない。

     こんな夢ばかり見る俺は、頭がいかれてしまったんじゃないのか?
     こんな世の中には未練などない、
     いっそ、夢の住人たちのように死んでしまおうか!!

     そんな事を考えながら、いつの間にか眠りに就いていた。

     またもや何か眼前に現れるものがあり、
     眩しさのため目を開けることができない。
     暫らくすると、少しづつ目を細め、そして、目を凝らして、その光の輪の中を見た。

     その光の中に、あのトラックに轢かれた少女がいた。
     川で溺れた男の子もいる。
     足を切断され悶絶した兵隊さんも、・・・・・・・・・
     あの人も、・・・・・・・
     
     この人も、・・・・・・・・・

     そして、ビルから飛び降りたサラリーマンもいるではないか。。。。。

     苦しい筈の彼らが笑ってこちらを見ている。
 
     俺に、ここに来て仲間になれってことか?・・・・・・・

     ああ、逝ってやるさ。
     もう、何もかも嫌になってから、7年も家に引きこもってんだ。
     社会は俺を見捨てやがった、
     親だって、妹だって、俺をさげすみ、嘲笑ってやがる。
     はははっ、待ってろよ、そっちに逝くからな。

     そう思った瞬間、青い閃光が身体を貫いた。

     そして耳元で、くぐもった、しかし、清らかな声が囁いた。

     「この方たちは、すべてあなたです。
      生を全うすることなく逝った命たちです。
      あなたの夢にはご老人はでてきましたか?
      力の限り、この社会の荒波を乗り越え命を全うした者はいましたか?
      いない筈です、
      みんな心を残し、何人もの命を紡いできたけれど、
      悲しい死を迎えた方ばかりなのですから。」

     それを聞いた男は呟いた。
     「輪廻転生・・・・・。
      今度こそ、命の或る限り生きろってことか?」

     光の輪の中の彼らは、いや、俺たちは頷いて微笑んでいた。

     何度もなんども、俺はこんなことを繰り返していたんだな。
     この退路を、負の連鎖を俺のところで断ち切れってことだよな。

     俺の背中には、何十人もの命が繋がっているんだな。
     俺のいいところは単純ってことだ。

     やってやるよ、
     俺にしては一生懸命生きてみせるさ。
     これからの俺の人生がうまくいかなくとも、もう、他人のせいなんかにしない。

     そして、部屋のドアを見つめ、
     「先ずは、このドアを開いて、家族に朝の挨拶から始めようか。」・・・・

     “ガチャ”と、ドアノブを回し、
     ・・・・・・ギィ~と扉を開く、そして、そっと廊下を覗き、様子を窺う。
     あっ、何だか懐かしい匂いがする、これは、味噌汁の匂いに違いない。
     なかに入ってる具はなんだろうか。と、考えていた時、

     「お兄ちゃん、おはよう。」と、妹のマキが声をかけてきた。

     「お、お、おはよぅ・・・・・。」と、うつむき加減に男は挨拶を交わす。

     階下に降りていくと、
     おやじがさり気なく、「おはよう。」と、声をかけてきた。

     おふくろも、俺の顔を真っ直ぐに見据え、
     「かず、おはよう。」と、言ってくれた。

     そして、おふくろは直ぐに俺に背を向けながら、
     肩が少し小刻みに震えているのがわかった。

     大きく息を吸い、
     元気に、「み、みんな、おはよう!!」と、挨拶をした。

     挨拶するって気持ちがいいんだな。

     涙を拭いながらおふくろは、
     「さあ、ご飯よ。手を洗ってきなさい、かず。」と、俺の名前を再び呼んだ。

     おやじ、おふくろ、マキ、ありがとな。
     もう俺は大丈夫だ、
     俺には責任があるんだ、みんなと約束したんだ。
     男は、一度約束をかわした相手は裏切らない。

     食卓には、味噌汁、たまご焼き、鮭の照り焼き、ひじきの煮物、
     それから、おふくろが漬けたかぶの漬物。

     「いただきま~す。・・・うめっ、うめぇよ、おふくろ。」と、忙しなく箸を動かす俺。

     おふくろの顔がほころんだ。
     もう、泣かせはしないから。・・・・・

     


     どんな状況下でも、人は変われると信じたい。

     

     


     
      
     
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