フシチョウ・・・・きゅうぞうの部屋
日々のできごと、好きなもの、好きなひと、 そして、病気のことなどを綴っていこうと思っています。。   
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ラブレター
    ポストに手を伸ばし、その手紙を彼女は取り出す。

    躊躇いがちに、差出人を確認する。

    毎年、彼女の誕生日に送られてくるこの手紙。

    遡ること、もうかれこれ16年、彼女のもとへ永きに届けられている。

    はじめて送られてきた手紙は、薄気味悪いと彼女はゴミ箱に捨てた。

    しかし、時が経つにつれ、送られてくるその手紙が待ち遠しくなっていった。

    手紙には差出名はおろか、何も記されていない便箋が1枚、
    無造作に入れられているだけ・・・・。

    どんな意図があるのか推し量る事など出来ない、
    相手が自分の誕生日を知っている、ただそれだけで彼女は嬉しかった。

    ところが、25歳の誕生日を最後に、
    その手紙は彼女のもとへと運ばれぬようになってしまった。

    そして更に年月を重ね・・・・・・、彼女が嫁ぐ日の朝がやってきた。
    彼女は清々しい心持ちで、今日を迎えることができたのだ。

    

    新居には、真新しい家具や雑貨、電化製品などが所狭しと並べられ、
    今かいまかと、それらのものたちがご主人さまを待ち侘びている。
    その中に、束ねられた手紙もあった。
    それは、テーブルの上にひっそりと置かれていたのだ。

    昨晩、新婚旅行に赴くため、全ての準備を整えていたつもりが、
    ビキニだけ鞄に詰め忘れていた。
    新調し、少し高価なビキニは彼女のお気に入りとなっていたのだ。
    歩いて10分ほどの処に新居はある、
    迷うことなく彼女はそのマンションに向かった。

    梱包されたまま、
    解かれていない箱に入れられたままであろうビキニを探す手がとまった。
    そこには、あの手紙が寂しそうに留まっていたのだ。

    数年ぶりに彼女は、手にふれ、感慨深げにそれを見つめる。

    封を開けてみようかと少し躊躇した、
    なぜなら、そこには何も書かれていないことが解っていたから・・・。

    でも、やはり懐かしさが先にたち彼女は手紙を開けてしまった。
    するとそこには、達筆な文字でこう書かれていた。

    「11歳のわたしへ お誕生日、おめでとう!
     
     今年、あなたは犬を飼ってもらいます。
     最初は大いに喜び、散歩に連れ出したりと、それはそれは可愛がります。
     その仔の名前も自分で「リンダ」と名づけます。
     しかし、その仔がオスだと知ると、急に興味がなくなり、
     後は、お母さん任せにしてしまいます。

     どうか「リンダ」を愛してやって下さい。

     きっとあなたの心の友になってくれるでしょうから・・・・。

                                      未来のわたしより」

    それを読んだ瞬間、彼女の胸はチクリと痛んだ。
    「リンダ」は、もうこの世にはいない、もう少し可愛がってやればよかったと、
    ずっと後悔していたのだ・・・・・。
    あれ以来、動物は飼っていない。

    しかし、「未来のわたし」ってどういうことなのだろうか?
    どうして今更ながら文字が浮かび上がってきたのか?と、彼女は訝った。

    その他の手紙も開いてみた。

    読むたびに涙が溢れ、思い出がさざなみのように押し寄せては胸におちていく。

    これは確かに「わたし」からの手紙に違いない・・・・。
    どういう経路でここに届けられたのかは解らないけれど、
    きっと未来には、そういった扉があるのかもしれない。

    25歳以降、その手紙は何故届けられなくなったのだろう・・・。

    それでも、「わたしは今、とっても幸せ・・・・。」と、彼女は呟く。

    「これでいいんだわ、わたしの人生はこれから、
     未来のわたしは、きっと笑ってる、そうだよね、あなた。」と、
    
    俄かに大声をだしてみた、未来の「わたし」に聞こえるかのように・・・。

    
    すっかりビキニのことは忘れ、彼女は自宅へと帰路についた。

    
    それから暫らくすると新居では、ヒラヒラと1枚の写真が舞い降りた。

    そこには・・・・・

    そこに写っていたものは・・・・・・・・・・

    「未来の彼女」にしか知りえない事実が、そこに写っていたのだ・・・・。

    

    それは・・・・・・・・・

    

                       


                        完

    

    ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

    写真に写りこんでいた彼女の人生は、皆さまの手の中にあります。

    皆さまは、彼女のどんな未来を想像し、どんな世界を紡ぎだすのでしょう・・・・。

    

    燃ゆる我が心


    

    
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