フシチョウ・・・・きゅうぞうの部屋
日々のできごと、好きなもの、好きなひと、 そして、病気のことなどを綴っていこうと思っています。。   
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前程万里
    その男は優しげに微笑み、こう云った。

    「あなたの為に、あなた方の為に、
     この命、投げ出してでもこの国を守ってみせましょう。」

    その男の手には、白い花が一輪、しっかりと握られていた。
    そして、その花が突然、口を開いたのだ。

    「どうしてお前らの為に、命を無駄に捨てなきゃいけないんだ!
     ちゃんちゃらオカシイだろ!バーカ!」
    
    そう言葉を発すると、その白い花は萎れた。

    「はい、次。」と、真っ赤なマントを羽織った犬が、
    連なった人間どもに、吠えてみせた。

    次に壇上に上がった男は、聴衆に胸を張ってみせ、
    朗々と語りだした。

    「わたしならば、漢字の読み違いなど以ての外、
     一旦口に出した言葉に責任を持ち、実行あるのみでございます。」

    すると、その男がかけていた眼鏡が突然、曇りだし
    終いには割れて粉々に砕け散った。

    「はい、次はお前か?じゃあ、早く演説でも何でもやってくれ。」と、
    先ほどの犬が、薄笑いを浮かべ、女をせきたてた。

    少し緊張した面持ちで、女は呟いた。
    その声が余りにも小さかったものだから、聴衆から野次が飛び、
    それに堪えられなくなったその女は、壇上に突っ伏し泣き出してしまったのだ。

    迷惑そうに犬が、一声吠え、
    「もう、さっさとそこを退いてくれ。時間の無駄だ、次。」

    それから、何人も何十人もの人間が壇上に立ち、
    然も、自分がこの国を動かすトップであるかのように喋り続けては、
    儚く、夢と散ったのだ。

    或る者は、急に舌が伸びて喋れなくなり、
    あるものは、耳が像のように大きくなったりと不思議な現象は続いていた。
    
    「皆さん、わたしがこの国の総理になった暁には、
     病院も、学校も、あらゆる施設を、み~んなタダにします。
     給付金も、たんまり受給します。」

    その言葉を告げる度に、その男から妙な音がもれ、
    其のうち、音は会場中に轟いた。

    ブッ、ブブッ、ブオ~ン・・・・

    男は、その場に居た溜まれず、お尻を押さえて逃げ出した。

    暫らくすると、赤いマントを翻し、先ほどの犬が登場し、

    「みなの衆、政治家共は、相変わらずしたり顔で
     悪びれもせず、平気で嘘をつく。
     この国の為だといいながら、何も変わらないではないか!
     年々、自殺者数は増加、失業、雇用の悪化、
     国民の不安は頂点に達しているというのに、
     未だ自分の地位や名誉にしがみ付き、舌先三寸だ。
     
     この国を後にし、我らで理想郷を創り出そうではないか!
     こちらから、この国を見捨てようではないか!
     さあ、新しい一歩を踏み出そう!」

     聴衆は、その言葉に心動かされ、立ち上がったのだ。

     そして、その会場を後にしようと扉を開いた・・・・その瞬間、
     聴衆の目に飛び込んできたのは・・・・・・・・・、

     一体、そこには何があったのだろうか・・・・。
     
     果たして、彼らには、幸せな未来が待ちうけているのだろうか・・・・・・・。

     *************************

     「ねえ、この映画さぁ、意味わかんないと思わない?
      どうして犬が先導してるわけ?
      しかも、聴衆はみんなボロを着てたじゃん、何なの、アレ?
      もしかして、ゾンビ?ふふふっ
      しかもさ、みんなドヨ~ンとした目してさ、きしょくない?」と、
     
     女子高生とおぼしき女が友人に、映画の感想を述べていた。

     すると、その友人は、呆れた顔をして説明を始めた。

     「何言ってるの?
      あれは、わたしたちの祖先が残してくれた歴史映像でしょ。
      古いフイルムだから、色あせていたり、スクラッチノイズが入ってたんじゃない。」

     「え~っ、あたしたちの祖先て、あんな風だったの?嫌だ~。」

     そして、2人は思い思いに、先人たちの想いを語り合いながら歩き出した。

     映画館から出た2人は、歩くのに難儀していた。
     それは、この国ではいつもの光景である。

     道路沿いに、たくさんの浮浪者が寝そべり、物乞いをしている。
     
     どこからともなく聞こえてくる苦悶の声・・・・・・
     首吊り用のロープがあらゆる木や電柱に吊るされ、風にユラユラ揺れている。
     まるで日課のように、人々はビルからダイブする。
     それを、陽射しから遮るように手でかざし、眩しそうに見つめ、
     そして、また、事も無げにいつものように歩き出す。

     そしてそれは、もう直ぐなのだろう・・・、
     たくさんの選挙カーが、その傍らを、何事もなかったかのように行き交っている。
     
     候補者達の声が、大きくて耳障りだ。
     スピーカーから流れる決まり文句・・・・

     「より良い国づくり、あなたの強い味方、
      〇〇を宜しくお願い致します。
      国民の為に、骨身を削って死ぬ気で働きます。」

     それを人々は、覇気のない淀んだ目で追っている。
     心は麻痺し、思考する力さへも拒否している、
     変わりたくとも、みなぎる意欲も、英知も、
     彼らは、何処かに置き去りにしてしまったかのようだ。
     寂寥だけがまとわりついて離れない。
     
     それを冷ややかに見つめている一匹の犬がいた。
     カラダには、マントのような赤いアザが広がっていた。
     
     「もう、この国はお終いだな。」と、犬が呟いた。

     その時だった・・・・、
     ひとりの少年が、犬に向かって微笑んでいた。

     その少年の目には、一筋の、輝く希望が映し出されていたのだ。

     

                  完

                            

                       *子供らが、この世に生まれ出でて
                         後悔なきよう、大人が精進せねばなりませんね。
     
    
     
      
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